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要旨:日本語の形容詞については教科書や学者により、品詞の一、事物の性質、状態、心情などをその接続的、静態的な属性に着目して表す語という解説があるが、漢訳になると、その品詞が変わることがある。小論では日本語形容詞の漢訳における品詞変化と特徴について簡単に比べてみたい。はじめに、日本語の形容詞の四つの定義を紹介する。そして、その漢訳における品詞変化を分析してみるようにする、つまり、一部の形容詞は中国語に訳すと、名詞や動詞や副詞などになることについて、それぞれ例を挙げて説明してみたい。
キーワード:名詞動詞副詞
はじめに
教科書により、日本語の形容詞における解釈が多少異なるところがある。ここでその主な四つの観点を選んで紹介する。
一、「日本文法要説」によると、形容詞は動詞に似た性質を持っている、用言の一種として述語となるはたらきをもつということが文法上重要である。通俗的には、形容詞が連体修飾語と同じような意味に用いられることがしばしば見られる。
二、「にっぽんご4の上文法」によると、単語の中には人やものの状態や性質をさししめていて、規定語になるものがある。このような単語のことを形容詞という。
形容詞には「い」でおわるものと「な」でおわるものとがある。「い」でおわるものでを第一形容詞、「な」でおわるものを第二形容詞という。
三、「日本語はどういう言語か」によると、大多数の学者は、動詞と形容詞とのちがいを、活用のちがいだと説明している。動詞は属性を運動し発展し変化するものとしてとらえて表現する。形容詞は属性を静止し固定し変化しないものとしてとらえて表現する。
四、木村新次郎は日本語には「赤い・真っ赤な.真紅の(バラ)」「すばらしい.優秀な.抜群の(成績)」という語形上、少なくとも三種類のタイプの形容詞があると主張してきた。
以上の四つの観点は異なる視点から形容詞に対して解説している。どちらもその合理的なところがあるが、その「品詞」について、どうだろうか。これから、これにもとにして日本語の形容詞を中国語に訳した「品詞性」の変化とその特徴にについて分析してみよう。
日本語の形容詞は中国語に訳すとどうなるか、どのような特徴を持っているか。日本語の場合、「ない」という言葉は形容詞であり、「ない」に対する「ある」は動詞である。しかし、中国語には「没有」は動詞で、形容詞ではない。このように「品詞」において、日本語の形容詞は中国語に訳す時、必ずしも形容詞になるとは限らない。一部分の形容詞は中国語に訳すと、名詞か動詞か副詞になる場合がある。つぎにはその典型的な例を挙げてみよう。
一、日本語は形容詞――中国語は名詞
日本語では「形容詞」とされているが、中国語では「名詞」と訳される例を挙げてみよう。
表一:日本語の第二形容詞(形容動詞)は中国語に訳すと、「名詞」になる。
日本語は形容詞品詞性日本語の例中国語の例文
困難第二形容詞困難に打ち勝つ战胜困难(名詞)
手近第二形容詞辞書がいつも手近に置く字典总是放在身旁(名詞)
また、中国語に訳すと、形容詞と名詞の兼用が多く見られる。次の例を挙げてみよう。
“便利”は「都合のよいこと。役に立って具合のよいこと。また、そのさま。」という意味である。中国語に訳すと“便利、方便、起作用而且很好用”という意味である。「通勤に便利な土地」「便利な道具」という便利は第二形容詞である。「この辺はなんかと便利がよい」の“便利”が名詞である。ただし、“你要不要方便一下”の“方便(便利)”は「スーパー大辞林3.0」では第二形容詞を扱扱ったが、名詞とみなすべきである。この“便利”が便利という意味ではなく、大小便を排出すること、便通などを意味する名詞である。
日本語の形容詞は中国語に訳すと、名詞になる、あるいは名詞と形容詞の兼用が多い。これは、日本語と中国語そのものの特徴に関係があるかもしれない。
二、日本語は形容詞――中国語は動詞
日本語の表現では、形容詞で、それを中国語に訳すと、動詞になるケースがよく見られる。次の例を挙げてみよう。
表二:日本語の表現は第一形容詞で、それを中国語に訳すと、「動詞」になる
日本語の形容詞品詞性日本語の例中国語の例文
惜しい第一形容詞時間が惜しい珍惜时间(動詞)
詳しい第一形容詞京都に詳しい对京都熟悉(動詞)
上記の例では、日本語の表現は形容詞であるが、中国語に訳すとき、動詞になる。翻訳するとき、単語の“品詞性”の変化は原文の意味をもっと表し出すことができる。ところが、日本語の形容詞を中国語に訳すと、形容詞と動詞の兼用が少なくない。たとえば:“いやらしい”は日本語には形容詞である、二つの意味がある。
①様子、態度などが人に不快感を与えるさまである。中国語に訳すならば、“讨厌,可憎,讨人嫌,令人不快。样子、态度等给人不愉快的感觉”という意味である。
その中の“讨厌”は、形容詞でも動詞でもある。“讨厌”は“令人厌烦;讨嫌”を意味する場合は動詞である。たとえば、“讨厌的(这儿是形容词)天气”“别惹人讨厌”。
また、“讨厌”は“对人或事物反感;厌恶”を意味する場合も動詞である。たとえば、“很讨厌他那低头哈腰的样子”など。
しかし、“讨厌”は“事情难办,令人心烦”を意味する場合は形容詞である。たとえば、“半夜三更,很大的狂风,起来去换票盖印,好不讨厌”[瞿秋白著瞿秋白作品集中华现代精华文库1935年p.269]
②性的に露骨で不潔な感じだ。中国語に訳すならば、“下流、卑鄙、猥亵”という意味である。
その中の“猥亵”は、中国語には、形容詞と動詞の兼用である。“猥亵”は“(言语或行为)淫秽下流”という意味をする場合は形容詞である。たとえば:“我觉得在路上时时遇到探索,讥笑,猥亵和轻蔑的眼光”[鲁迅彷徨人民文学出版社1979年伤逝p.2]
また“做下流的动作”という意味をする場合は動詞である。たとえば:“猥亵妇女”
このように、日本語では形容詞であるが、中国語に訳すと動詞になる。あるいは形容詞と動詞の兼用になるケースもいろいろある。勉強するとき、品詞性の変化に注意しなければならない。
三、日本語は形容詞――中国語は副詞
日本語の表現は形容詞であり、それを中国語に訳すと副詞になるケースが少ないけれども、確かに存在する。次の例を挙げてみよう。
表三:日本語の表現は形容詞で、中国語に訳すと、「副詞」になる
日本語の形容詞品詞性日本語の例中国語の例
みごと第二形容詞みごとに失敗する完全失败(副词)
確か第二形容詞彼が生きていることは確かだ他确实还活着(副词)
上記の例で、日本語の表現は形容詞であるが、中国語に訳すとき、副詞になる。日本語の形容詞が中国語に訳すと、形容詞と副詞の兼用が少ないだけが、存在する。例えば:
①“完全”は日本語には第二形容詞である。中国語に訳すと、“完全、完美、完整、
完善、理想、纯粹”という意味である。
その中に、「かんぜん」は“完全”を意味する場合は形容詞と副詞の兼用になる。“四肢完全”“话没有说完全””の“完全”は形容詞の用法である。しかし、“完全是一派胡言”“困难是完全可以克服的”と“灭了灯,把头完全盖在被子里”の“完全”は副詞の用法になる。
②“痛い”は日本語には第一形容詞である。中国語に訳すと、“手痛”“脚痛”
どの“因生病、受伤或其他刺激引起的难受的感觉”を意味する場合は形容詞である。でも、“痛打”“痛骂”“痛饮”などの“深切地;彻底地;尽情地”を意味する場合は副詞である。
おわりに
日本語の形容詞は中国語に訳すとき、必ずしも形容詞になるとは限らない。一部分の日本語の形容詞が中国語になると名詞、動詞、副詞になる場合がある、このような現象は日本語自身の特徴とも関係していると考えられるかもしれない。翻訳するとき、もっと正しくするように、訳したあと“品詞性”の変化に注意しなければならない。
参考文献:
「1」佐藤喜代治著.昭和35年10月.日本文法要説現代語編「M」.日本書院
「2」三浦つとむ.1976年4月.日本語はどういう言語か「M」.講談社学術
「3」スーパー大辞林3.0「M」.三省堂.2010年.
「4」88人暢談学地道的日本語「M」.大連理工大学出版社.2011年.